豚肉仮面

かりに 豚肉仮面が 正義の味方であったとして
そういうものが無遠慮に正義に加担してしまう世相について
きみたちは違和感を覚えるかもしれない
が そもそも「仮面を被った正義」というのはなんだ?
そんな 仮性包茎みたいな 正義が 果たして 悪に勝てるのか?
いや、ぼくは抽象論をもてあそんでいるのではない
小児癌患者の老後不安とか
乾物屋の秋冬コレクションとか
そういう話をしたいのではない
ぶたにはぶたの
肉には肉の
正義があるはずだと
そういうふうに 考えるのは異常なことだろうか?

いや、わかっている
間違っているのはたぶんぼくたちの方だ
でなくても
禁酒の続行だけが目標であるような 豚肉仮面の人生は きみたちは退屈なだけだろう
まして ばかな世間と折り合いをつけるためには デブになる必要があるという
ぼくたち ぶたにく主義者の立場なんて 絶対に わかってもらえっこないだろう

でもヘビのウロコが 一枚ずつ別々に見えていながら その実 ひとつながりであるのと同じように
忍耐とあきらめは 連関している
それどころか そのふたつは
ひとつの同じ精神作用の 別の局面なのだ

ああ それにしても
検事気取りのくそおやじに
「そういう態度はフェアじゃないぞ」
 てなぐあいに決めつけられて それでも 黙ってヘコんでいなけりゃならない理由が
先天的にぼくたちに備わっているわけでもないのに
どうして豚肉だけが ファッション雑誌の特集ページから 周到に遠ざけられているのだろう
これは 差別ではないのか?

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