5月2日 日曜日 晴れ
 蟄居。
 赤羽は昨日より「馬鹿祭り」に突入。
 ここ数日、商店街のスピーカーが終日「馬鹿ロック」を流している。
 いや、冗談を述べているのではない。
 この町では、5月1日から「馬鹿祭り」という商店街主催のお祭りが本当に催されていて、「馬鹿ロック」という名前のオリジナルソングが一日中流されているのである。
  1. おそらく昭和30年代のある日、「赤羽馬鹿祭り」が企画される。
  2. 当初は4月1日のエイプリルフール(四月馬鹿)が開催日で、その日にちなんだ祭りだった。
  3. いつしか祭りの名前は「東京馬鹿祭り」→「大東京馬鹿祭り」というふうにエスカレートし、開催日もゴールデンウィークにずれ込むようになった。
  4. が、何を反省したのかある日「大赤羽馬鹿祭り」にグレードダウン。
  5. 平成に入ってからは、「大北区祭り――赤羽馬鹿祭り」というふうに、「馬鹿」はサブタイトルに引っ込む方向で推移。
  6. テーマソングであった「赤羽馬鹿踊り音頭」は、1980年代のいつごろからか「馬鹿ロック」に変更。ただし、メロディーはまったく同じ。歌詞の「馬鹿踊り」の部分が「馬鹿ロック」に差し替えられ、アレンジが若干ビートのきいた(といってもメロとリズムが音頭だから……)ものになっただけ。
   といったあたりが私が把握している馬鹿祭り事情のおおよそだ。
 馬鹿な話だと思う。

 そういえば、オリジナル「馬鹿踊り音頭」にあった「奈良の大仏〜 なぁらのだいぶつ 馬鹿おどりぃ〜」「高速道路で、こおそくどおおろで馬鹿おどりぃ〜」などの優れたフレーズは「馬鹿ロック」では「朝もはよから、朝もはよから馬鹿ロック」といった調子のインパクトを欠いた表現に差し替えられている。
 不見識だと思う。
 馬鹿において肝要なのは馬鹿道を貫徹する馬鹿強さである。
 及び腰の馬鹿ほど見苦しいものはない。
 先人の大馬鹿を恥じて馬鹿度を薄めた商店街の2代目連中は薄ら馬鹿だと思う。
 薄ら馬鹿は大馬鹿よりもずっと悪い。
 
 夕刻、S君より電話。
 5年ぶり、いや7〜8年ぶりぐらいか。
「どう?調子は?」
「ええ、ちょっとケガをして療養中だったりしてまして」
「事故かなにか?」
「ええまあ、事故っていえば事故みたいなもんだけど、飛び降りちゃって」
「……ああ。そりゃ大変だったねえ」

 うーむ。
 何人か心配な知り合いがいる。
 彼らは、皆、私が心配した通りの道を歩んでいる。
 私の心配がいけないのだろうか?
 それとも私の心配が真摯さを欠いていたからなのか?
 わからない。

   5月3日 月曜日 晴れのち曇り
 終日蟄居。
 寝たり起きたり。
 五月病か。
 今日の深夜、深夜NHKのBSで「レッドツェッペリン狂熱のライブ」が放映される。
 で、明日の深夜は「ジギースターダスト」
 明後日が「クルトワイルのセプテンバーソング」
 まるでオレに向けてプログラムされているみたいだ。
 ってことは、これはつまり休日蟄居モードのオヤジ向けシフトなわけだ。
 まあ、憲法の討論番組なんか見せられるよりはいいけど。

 夜。
 「ニュースステーション」に「盲目の天才ピアノ少年」というのが出て来た。
 うそつけ
 と、思ったが、その10歳の少年のピアノは本当に見事だった。
 柄にもなく感動してしまった。
 
 気持ちが弱っているようだ。
 

5月4日 火曜日 雨
 未明、「レッドツェッペリン狂熱のライブ」を観た。
 素晴らしい。
 がっかりすることを恐れていたのだが、そんなことはなかった。
 がっかりするどころか、ツェッペリン再評価運動をはじめることになりそうだ。
 何年か前に「ストーンズのハイドパークコンサート」のLDを聴いて呆れ返って以来、あの時代のライブには不信感を抱いていたのだが、間違いだった。
 ストーンズの演奏のヒドさ(←だってチューニングも合ってないんだぜ)は、当時としても例外だったのだろう。
 でないとすると、チャーリーワッツのドラミングは、あれは何かのジョークだったに違いない。
 
 「狂熱のライブ」も、今の水準から見れば、確かに粗いところはある。
 音は割れているし、ステージングもアバウトだ。
 が、そんなことは問題ではない。この時代のライブには完成度なんてものを問題にしない熱気がある。

 この映画は、学生の頃、新宿西口の「パレス座」で3回ほど観た。
 パレス座は、ロック関連のフィルムの再上映に力をいれているいい映画館だった。

 あらためて振り返ってみるに、当時はまるで音が聴けていなかったようだ。
 今朝、20年ぶりに観てみて、ツェッペリンが基本的にはブルースバンドであったことにあらためて気付いた。
 ボンゾの偉大さにもはじめて思い至った。
 惜しい人をなくした。
 オレは何を聴いていたんだろう。
 ロバートプラントの金属高音にシビれていただけなのだろうか。
 おそらく、20歳前後の頃の私にはブルースの教養がまるで欠けていて、ただデカい音を聴きたくてこの映画を好んでいたのだろうと思う。
 新宿の「サブマリン」や原宿の「DJストーン」にもよく顔を出したが、今思えば目的は音量だった。
 まあ、仕方がない。
 若い人間の耳には、音楽の質やらではなく、何より音量の絶対値が必要なのだから。
 少なくとも私はそうだった。
 いずれにしろツェッペリンやピンクフロイドは窓が震える音量で聴かないとダメだった。
 クリムゾンも同じだ。
 うむ。
 '70代ロック遺跡巡礼の旅に出よう。
 どうせやることもないんだし。


 昼過ぎに起床。引き続き蟄居。ひどい嵐だ。
 スカパラのドラマー、鈴木達也が井の頭線に轢かれて死亡。
 いーのかしら?
 うん、わかっている。
 笑える話題ではない。


5月5日 水曜日 晴れ
 未明、NHKのBSで「ジギースターダスト」を観る。
 録音がひどい。
 高音はヒズんでいるし、低音はコモっている。
 ボウイの歌もちょっと……
 もう少し歌の上手い人であるはずなのだが……

 やっぱり「ステージ」の時のライブの方がずっと良い。
 おそらく「ジギースターダスト」のライブが行われた73年当時、ホウイはひどいジャンキーだったのだと思う。でなくても殺人的なツアースケジュールに疲弊していたのだろう。
 衣装や演出など、凝ったステージではあるが、なんだか今の目で見るとインチキくさい感じがするばかりだ。
 わかっている。
 ボウイのライブは当時としては最先端の試みがたくさん盛り込まれていて、それはそれはあっと驚くものであったのだ。
 だから、当時から無価値であったわけではないし、こんなふうにインチキくさくもなかったはずなのだ。
 最先端は陳腐化しやすい、とそういうことなのだ。
 ショウアップの手法は日進月歩だ。
 20年前の最先端は、児戯に等しい。
 これに比べると、ツェッペリンの何の工夫もない「演奏でーす」というだけのライブは、時代の波に浸食されることを免れている。

 字幕もひどかった。
 誤訳だらけ。
 曲名まで間違っていた。
「Watch that man」を「Hang on to yourself」と紹介していた。
 まったく。
 当時、ロックミュージックの翻訳をやっていた人間は、ロック的ハッタリの人々だったのであろう。
 そういうシェキナベイビーな人々の腐った翻訳のおかげで、ずいぶん勘違いをさせられた。
 誤訳も多かったが、なにより自分勝手な意訳が幅をきかせていた。
 落合恵子。
 岩谷弘。
 片桐ユズル。
 まったく。
 私が比較的真面目に英語を勉強したのは、こういう人たちの腐った訳詞が憎かったからでもある。

 今野雄二は許す。
 オカマさんのセンスにはかなわないから。
 誤訳にさえ独特のセンスがあったからなあ。


 
 午後3時に目覚ましで起きてサッカー観戦に専念。
●アントラーズVSジュビロ
 素晴らしい試合だった。
 攻守の展開の速さといい、パスの質といい、さすがにトップチーム同士のゲームはレベルが高い。
 アントラーズは柳沢が本調子でないみたいだった。
 小笠原のシュートは、飛び出しのタイミングといい、落ち着きといい、パーフェクトだった。
 シュートの瞬間以外にも良いプレイがいくつかあった。なによりパスセンスが良い。ボールキープも安定している。
 レギュラー定着も近いのではないか。
 後半は、運動量の落ちたアントラーズが攻められて結局同点。
 名波のFKはあれは半ばまぐれであるにしても、素晴らしかった。
 延長戦は双方ともバテバテでルーズな展開になった。
 最後は中山の折り返しを藤田が決めてVゴール。
 まあ仕方がない。
 ヴェルディーの優勝を阻止するためには磐田の勝利がこの際不可欠だ。
 選手は憎くないけど、日テレとナベツネがはしゃぐのがかなわないからな。
 ごめんね、中沢君。
 
●レッズVSセレッソ
 アントラーズ・ジュビロ戦と比べると明らかにレベルが低い。
 双方に意図のないクリアボールや単純なパスミスが目立つ。
 レッズはリードしていてもまるで勝てる気がしない。
 ペトロがいない。
 福田も福永もいない。ロボもいない。
 チキ、大柴は故障上がりだし、伸二は疲れている。
 しかも、今日の試合で西野(骨折だって)と城定が壊れた。
 ああ。

 試合は開始早々から押され気味。
 20分、小野のFKをセレッソのディフェンダー、ペリクレスがオウンゴール。
 ラッキー!
 と、思う間もなく、28分、森島のピンポイントのクロスを西澤に決められて同点。
 見事だった。
 30分過ぎ、相手ペナルティーエリア内にドリブルで切れ込んだ山田が倒されてPK。
 これをチキがゲットして2-1。
 山田は、良い時は本当に素晴らしい。
 が、それでもなお攻められっぱなし。
 前半終了間際の小野伸二のドリブル突破は超見事だった。トップスピードでボールを持ってセレッソのディフェンダーを3人かわしてシュートまで持っていった。
 おい、こんなことができるのか!
 最後のシュートが決まらなかったが、こういう突破力があるのなら、いっそフォワードをやったらどうだ?
 後半、動きの悪い大柴(←怪我でした)を外して池田ノブを投入。
 相変わらず押されっぱなし。中盤のルーズボール8割方持っていかれる感じ。
 ファン・ソンフォンにヘッドを決められて同点。
 43分。混戦からファン・ソンフォンが右足でゲット。完璧。
 その他、気付いた点。



5月6日 木曜日 晴れ
 録画してあった「9月のクルト・ヴァイル」を観る。
 ナマで観なくてよかった。
 好きな人は好きなんだろうけど、私はこの種の「スタイリッシュな映像」にアレルギーを持っている。
 ルー・リードも渋いのは渋いとして、あんまり年寄りくさい。
 やっぱりこの人のピークはヴェルヴェットの「ローディッド」からソロの「トランスフォーマー」まで。それから「コニー・アイランド・ベイビー」あたりだ。
 90年代にはいってから妙なぐあいに再評価されて文化人みたいなことになってしまっているが、あれは誤解だと思う。
「ニューヨーク」なんて少しも良くない。
 まあ、それでもどんなに腐った曲でも、私はルーさんの声を聴いているだけで幸せになれるんだけど。
 スタンダードをやってくれないかなあ。
 シナトラのナンバーとか、「フライミー・トゥー・ザ・ムーン」だとか、そういうのやったら絶対にいいと思うんだけど、やっぱりソングライターの意地があるのか、自分の書いたヘンな曲歌いたがるんだよな。


5月7日 金曜日 晴れ
 S君より再び電話。
 たぶん、クスリのせいでハイになっているのだと思う。
 ちょっと自己肥大気味のひとりしゃべりが続く。
「ボクはアレなんですよ。現在はジョブレスなんですけど紙一重の方だから自分をアピールする能力には自信があるんです」
 うーむ。
 こういう時、ひどいことを言ってはいけない。
 近い将来鬱に転じた時に思い出すだろうから。
 といって、無批判におだてあげるとどこまでのぼっていくかわからない。

 人間は不可解だ
 液体のはいったゴムの袋みたいだ
 ぶよぶよしたぼくたちは
 ある日
 突然に破れてしまう
 オーバーフロー
 あるいは循環液が固化するのだろうか?
 それとも気化?
 でなければ腐敗か?
 システムエラー
 注意せねば
 リソースが不足気味だ
 未解放のジャンクメモリのせいだろうか


5月8日 土曜日 晴れ
 午後よりサッカー観戦。
●磐田VS浦和
 この結果、浦和は11位。
 J2落ちも十分にありうる位置だ。

誤爆!!!
 NATO軍の空爆がベオグラードの中国大使館を直撃した。
 死者も出ている模様。
 げげげ。
 どう解釈したら良いのか。