3月28日 日曜日 晴れ
 足立区の鹿浜にある都市農業公園というところに行ってみた。
 桜は咲いていなかった。
 川原のソメイヨシノは3分咲き程度。
 寒い。

 俳優の沖田浩之が首吊り自殺。
 なるほど。
 人間は咲いてもいないのに散ることができる。
 竹の子族の死。

 頑丈に見えていた表皮の下には意外に柔らかい中身が隠れていたということだろうか?
 それとも、成長して竹になっても中身は空洞だったと、そういうことなのか?
 オキタよ。教えてくれ。
 なぜだ?
 どうしてお前は自殺だなんて早まったまねを……

「なぜだって、そりゃこっちのセリフだよ」
 ……おお。なにがだ?
「だからさ、おまえこそどうしてさっさと死ぬ気にならないんだ?」
 ……うう……
「借金だらけなんだろ?」
 …………
「オレが早まったんじゃなくて、お前がノロマってるんじゃないのかよ」
 お、お、オキタぁああ。
「待ってるぜ」

 待つな。
 待たないでくれ。
 オキタよ。
 待っても無駄だぞ。
 オレは、追悼も追随もしない。
 自殺者にふさわしいのは忘却だけだからな。
 
 日テレのニュースでは「竹の子族などを経て芸能界入り、歌手として……」と経歴を紹介していた。
 なるほど。
 竹の子族は経歴になるんだな。
 とすると、たとえば千代大海なんかは
「ヤンキーを経て角界に入門。平成11年の春場所に大関に……」
 てなことになるんだろうか?
 オレの場合は、「ゾク連中との交遊を通じて学んだ独自の語り口で……」か?

 首を吊る場合には、事前にプロフィール原稿を用意しておくべきだということだな。
 葬式の招待客も決めておこう。
 森繁に来られたりしたらかなわないからな。

 それにしても、沖田といいhideといい、結果的に自殺をする人間は、後になって振り返ってみると、生きている時から独特の無表情を身につけていた人間であるような気がする。
 伊丹十三もそうだ。
 沖雅也も同じだった。
 一点凝視系の、ほっぺのカタそうな、息を止めている時みたいな、イヤな表情。
 死神が背中に乗っていたんだろうか?
 アタマの後ろを引っ張られると、あんな表情になるんだろうか?
 それとも、あれは、体腔の内圧がマイナスになっている人間の顔なのか?

 自殺した知り合いの顔を思い浮かべてみる。
 おお。
 彼らもみな同じ表情を浮かべている。
 いやな感じの無表情で、オレの方をじっと見ている。
 待っているのか?
 おい。
 待つ権利があるとでも思っているのか?
 いやな表情だ。
 オレが寝不足の時に浮かべる表情だ。
 ってことは、彼らは寝不足だったのか?
 寝よう。
 一に睡眠、二に自殺。
 そう、自殺は次善の解決でしかない。
 あっ。
 わかったぞ。
 きっと、連中はどうやっても眠れなくなって、それで死んだのだ。
 睡眠力の減退。
 注意せねば。
 眠くなったら、とにかく一も二もなく、即座に、その場で、後先も考えずに、眠れるだけ眠ることにしよう。
 不眠の傾向が出てきたら、医者に行って眠剤を処方してもらおう。
 とにかく、何が何でも一日10時間の睡眠は確保しないといけない。
 命にかかわることだからな。

3月29日 月曜日 晴れ
 寒い。
 「インターネットIP」の付録からインターネットエクスプローラの5.0を持って来てインストールしてみた。
 特に変わったことはないようだ。
 夜、確定申告のための資料を作る。
 おお。
 去年はあんまり働かなかったようだ。
 エクセルは嘘をつかない。


3月30日 火曜日 曇りのち雨
 確定申告に行ってきた。
 無事終了。
 まあ、たいした申告じゃないし。

 ついでに出張所に寄って地域振興券を受け取ってきた。
 皮ジャンを購入。
 おお、ちゃんと買えるじゃないか。
 おままごとみたいだ。
 いいぞ。
 この地域振興券は「天下の愚策」と言われているようだが、実際に買い物をしてみると意外なほどうれしい。
 現金で買い物をするよりうれしい。
 案外、これは妙策かもしれない。

 いや、長い目で見るとやはり愚策だろう。
 というよりも、このおままごとじみた買い物券は、本質的な部分で「経済」を愚弄しているのだ。
「経済って言ったってさあ、要するに国家規模のおままごとなわけだろ」
 うむ。
 地域振興券は、労働に対する報酬ではなく、むしろ働いていないことへの祝福として機能している。
 とすれば、それは労働の否定ではないか。
 福祉?
 こんなに大雑把なものがか?
 冗談を言ってはいけない。
 飢饉の時の施餓鬼じゃあるまいしお役所に出向いて受け取りに行かねばならないというその配布のあり方が人を馬鹿にしているじゃないか。
 なんだか江戸時代の小判の改鋳に似た怪しさがあるとオレは思うぞ。

 結局、地域振興券は、国民経済が一部の人間の恣意的な小細工で動いているということを証明するニセのポーカーチップみたいなものとして、大蔵省の大看板に泥を塗っている。
 であるからして、このプリミティブな信用貨幣は、経済行為をおとぎ話の次元に貶め、信用経済の根幹にあたる部分に容易に癒すことのできない汚れた傷をつけるだろう。
「金が無いんなら刷ればいいわけだろ」
 うむ。
 少なくともオレの勤労意欲は、こんな紙切れで買い物ができてしまうという事実に直面して、ちょっとシラけたぞ。。
 しょせんカネなんてお上のさじ加減ひとつでどうにでもなるわけだし、まあつまるところは天下の回りものなわけなんだからさ。

 夕刻、新宿ヒルトンにて対談の仕事。
 帰りは雨。


3月31日 水曜日 雨
 朝の9時に起きて、10時からまた寝て、午後5時まで眠った。
 大丈夫だ。

●日本代表VSブラジル代表
 結果は0-2で負け。
 負けは仕方がない。
 が、TBSの中継はどうにかならないのか?
  1. CMの多さ(前半5回、後半たぶん4回。しかもボールがピッチを動いているのもおかまいなしにいきなりCMに入る)。
  2. 必然性のないアップ映像の多用。
 これは、放送以前の問題だ。
 アナウンサーは、日テレのフナコシなんかよりはずっと良かったが、それでも試合の状況と関係のない話が多すぎた。
 ボールを持っている選手の名前は、必ず言うようにしてほしい。
 中継アナの仕事なんて、それだけで十分なんだから。
 カメラも引いた位置で全体をなめてくれていればそれで大方はオッケーだ。
 ナカタのアップとか、ベンチのアップとかを3分ごとに挿入する必要はないよ。
 簡単なことじゃないか。


4月1日 木曜日 曇りのち晴れ
 武蔵丘陵森林公園というところに行った。
 関越自動車道東松山ICを降りて熊谷方面に約10分。
 広大な敷地。
 桜はまだ。
 このへんまで来ると都心より1週間分ぐらい寒いのかもしれない。
 家族連れがたくさんきていた。
 オレもあんなふうに見えるのだろうか、と、ふと思う。
 パパと呼ばれている人たちのみっともなさ……
 腹の出た、アタマの薄い、ポロシャツの、ガニマタの、困惑しながら笑っている、どうにもみっともない父親たちのとぼとぼした足取り。
 哀れではあっても、決して同情や共感を呼ばないしょぼくれた後ろ姿。
 日本の男たちは、背広を脱いだとたんに、どうしてこうも露骨にみっともなくなってしまうのか。
 まるで羽をむしられた蝶じゃないか。
 いや、むしろ殻を出たかたつむりか?

 なんとかしなければいけない。
「子育てをしない父親を父親とは呼ばない」
 と厚生省は言うが、そういう問題ではない。
 ファッション業界は、イカした父親ファッションを考え出すべきだ。

 オヤジのカジュアル。
 難しい問題だ。
 単にファッションの問題ではないのかもしれない。
 カジュアルな時間と無縁であるという、オヤジの生存環境そのものが、彼らの休日をむごたらしくも醜い姿に見せているのかもしれない。
 あるいは、世間は、オヤジがくつろぐことを許していないのだろうか。
「パパ!遅いよ!」
 と、呼ばれてちょこちょこ走って行く小股のオヤジ。
 いっそ、ネクタイをして出かけてほしい。
 もちろん、寝る時もネクタイに背広。
 グンゼかBVDに就寝用の肌にやさしい背広を開発してもらおう。
 たぶん、そっちの方が話が早い。


4月2日 金曜日 晴れ
 素晴らしい天気だ。
 昨晩の11時から朝の7時まで寝て、午前10時から午後5時まで昼寝をした。
 17時間睡眠。

 こんなにも素晴らしい空の下で、私はただ眠りつづける
 薄もやのかかった憂悶を 遠い記憶の底に沈めて
 移動曲馬団の無口な象のように
 もちろん
 夢は見ない
 空に太陽のある限り

 プロ野球開幕。
 バルビーノ・ガルベスのまつげの長さに少し驚く。
 どうしてあんなに長いまつげを持った男が、あんなひねくれたタマを投げるんだろう。
「まつげが長いって?当然じゃないか。内角のストライクゾーンを正しく見極めるためには長くて強いまつげが必要だからな」
 おお、バルビーノよ、キミはまつげでストライクゾーンを見ていたのか?
「だって目玉はバッターのこめかみを見てなきゃならないからな」
 わが友バルビーノよ。ピッチャーはキャッチャーミットを見てボールを投げるものだと、キミのコーチは教えなかったのか?
「敵の急所を見ないでどうして敵を倒せるんだ?」
 ちがうんだバルビーノ。ボールは敵を倒すために投げるものではない。ボールは敵に打たれないために投げるものなんだ。わかるか?
「ニッポンのストライクゾーンは間違っている。本当のストライクゾーンは、バッターのこめかみのど真ん中にある。オレはいつだってそこにファーストボールを投げ込むことができる」
 ああ、バルビー……
「シュートボールはアゴの先端。シンカーは膝頭だ。わかるか?そこにピンポイントでコントロールできないピッチャーは敵を倒すことができない」
 …………
「それから、お前にだけは教えてやるが、審判の急所は首だ」
 バルビーよ。聞いてくれ……
「オレのカット・ファースト・ボールが井野の喉仏をジャストミートしたらどうなると思う?」
 ……キミは永久追放だ。
「でもヤツは、2度と『ボール!』をコールできなくなる」


4月3日 土曜日 晴れのち曇り
昼過ぎから嘘のように気温が下がった。
で、午後2時から7時まで昼寝。
順調だ。
●浦和VS川崎
2-2で延長の末引き分け。
これでレッズは5戦して引き分けが3つということになる。
小野、福田、チキ、ペトロ、ザップ、ロボを欠いたレッズはやはりレッズではなかった。
福永が一人で頑張っていたが、一人ではどうにもならない。
後半に入ると池田、広瀬のオヤジコンビが疲れて交替、さらに福永が2枚目のイエローで退場すると、ヨミウリ拡販団の怒涛の攻めをかわすのがやっとだった。
この状態で負けなかったのは収穫だ、と、そう考えねばなるまい。
とにかく、中盤がまるで作れなかった。
ディフェンスも穴だらけだった。
前線も、ほとんどなかった決定機を2つもモノにしたという点では合格点をつけるべきであるのかもしれないが、決して動きの質が良かったわけではない。
そして、城定……
いや、何も言うまい。
今回も、彼のプレイについては、酌量しておくことにしよう。
だって、城定は試合が終わってベンチに下がる時、泣いていたんだから。
そう。
本人が一番良くわかっているのだ。
責任は、むしろこんな状態の城定を使うベンチにある。
だって、顔を見ればわかるじゃないか。
あんなに自信のなさそうなサッカー選手をピッチに送り出してはいけない。
城定は、しばらく釣り糸でも垂れているべきなのだ。
誰にだってそういう時期がある。
誰もが鋼のメンタルを持って生まれてくるわけではない。
甘いと思うか?
しかし、サポーターが甘やかさないで誰が選手を甘やかすことができる?
「いや、麦は踏まれて強くなるんだ」
 違う。
 君たちは間違っている。
 諸君は弱い麦を踏み殺すことによって、より強い麦の生存を確保しているに過ぎない。
 麦畑全体の生産性を考えるなら、おそらく弱い麦を踏み殺す施策が正解なのであろう。しかし、一本一本の麦にしてみれば麦踏みは殺戮でしかない。

 わかるか?諸君よ。
 弱い麦に向かって「強くなれ」と言うことは「お前のような弱虫は死んでしまえ」と言っているのに等しいんだ。
「だからそう言ってるんだよ」
 死んじまえと言うのか?
「そうだよ。 信次前! だ。きまってるじゃねえか。城定信次が前に出ないとサイド攻撃ができねえんだよ」
 おお!そういうキミはわが友ペトロではないか。
「ついでに言えば小野伸二も前に走らねえとダメだ」
 おお、ペトロよ。君も日本語が達者になってきたじゃないか。
「とにかくワールドユースが終わるまではウチのチームも 伸二待ってる ってことだ」
 ああ、ペトロよ……
Jojo was a man who thought he was a loner
But he knew it couldn't last
Jojo left his home in Tuscon Arizone
For some Carifornia grass
Get back,get back,get back to where you once belong
いまになったようやくこの歌の意味がわかった気がする。
ロックンロールの予言者、ポール・マッカートニーは、1969年の段階で早くもレッズの不調と城定の自信喪失を見ぬいていたのである。
訳してみよう。
城定は一匹狼を自認していたが
長くやっていけないこともわかっていた
城定はアリゾナ州ツーソンの家を捨てて
カリフォルニアに葉っぱを探しに行った
ゲットバック 帰ってこいよ 昔いた場所に
おそらく、城定にいま必要なのは上等なマリファナの一服だ。
一服すれば、あの去年の夏頃の、リラックスした、飄々とした城定が戻ってくるはずだ。

ベルディは、北沢が良かった。
前節の鹿嶋戦でもえらく良かったが何かあったのだろうか?
無駄に動いているだけのハエみたいな選手と思っていたオレの目は節穴だったのかもしれない。
専門家に言わせると、サッカーでは無駄な動きがとても大切であるらしい。
というのは、サッカー選手が、一試合の中でボールを持っている時間は2分ほどに過ぎないからで、残りのボールを持っていない88分間をいかにして過ごすのかということが、サッカー選手の本当の価値を決定するからだ。
うむ。
示唆的な話だ。

帰宅後、留守電を聞くと結婚記念日を祝福するメッセージがはいっている。
おお。
忘れていた。
妻も忘れていたようだ。
めでたいことだ。
結婚記念日の日付をぬかりなく記憶しているようないやらしい人間と結婚生活を続行するなんて、まっぴらごめんだからな。
テン・スイート・ダイヤモンド。
一人芝居を二重にいやらしくした二人芝居。
ああいやだ。