2月28日 日曜日 晴れ
脳死による心臓移植が行われた。
日本初ってことで、テレビは大騒ぎだ。
各局とも脳死の判定、手術の開始、終了をリアルタイムで追っかけて速報を打っている。
何をはしゃいでいるんだろう。
そんなに大ニュースなのか?
患者と遺族はいやがってるんじゃないのか?

 「初の」にこだわるこの神経はいったい何に由来しているのだろう。
 で、2回目からは知らん顔だ。
 連中のアタマの中の「ニュースバリュー」は、「初の」「○○から1年」式の定型から一生抜け出せないのだろう。

 TBSは「脳死移植時代の幕開け」だとか言って特番を組んでいる。
 コメンテーターは渡辺淳一。
 文化系のことがわかりそうな医者、か?
 馬鹿みたいだ。
「高知何か動きがあったようです。○○さん、そちらはいかがですか」
「はい、高知赤十字病院です。心臓が搬出されるようです」
「アイスボックスがいまのせられました。いま、スタートいたしました。命のスタートが……」
 ……って、おい、こういうものの生中継が必要なのか?
 状況が一段落したあとで知らせればそれで充分じゃないか。
 なにもヘリまで飛ばして執刀医に余計なプレッシャーかけることないだろうが。
 それともナニか?もしかしたらキミたちは「何か」が起こるのを待っているのか?
 移植の失敗とか、患者の死とか、そういう特ダネを他局に抜かれたくないから、そんでもってナマでおっかけてるのか?


3月1日 月曜日 晴れ
 移植手術は無事に終了した。
 が、報道の連中は、今度は移植した心臓の脈拍数を追っかけている。
 おい。
 キミたちは何を待っているんだ?
 心停止か?
 容体の急変か?

「ニュースステーションは冒頭から30分以上このニュースをやっていた」
 日本初の……
 スポーツ中継のノリだな。
 でもって、最後に「我々報道にたずさわる者にも患者のプライバシーという重い課題を」式のイクスキューズを並べて、それで免罪を得たつもりでいる。
「私たち一人一人が考えていく必要がありそうです」
 って、おい、最後はまたこの決まり文句かよ。
 責任を全国民に拡散させて、それって「一億総懺悔」と同じ手法じゃないか。

 プライムタイムのフジテレビは、なんだか「公開夫婦喧嘩」みたいな番組をやっていた。
 ちらっとしか見なかったが、「女が飲んでなぜ悪い!? 殴る蹴るの仕打ちに涙する夫……」みたいなテロップが出てる中で、アル中の女房が出演者全員に説教をくらっていた。

 あーあ。

 こいつら、番組になれば何でもいいんだな。
 アル中患者を「意志の弱さ」や「逃避」だとかのキーワードで責めるっていうのは、これは最悪のことだぜ。
 ますます、アルコールに向かって追いつめるだよ。だって自責→自暴自棄→飲酒っていう、固定化した回路がアタマの中にできちまっている病気なんだからアル中ってのは。
 こんなことはアルコール依存症に関わっている医者にとっては常識だと思うんだけどなあ。

 とにかくアル中は病気なんだから、医者の専任事項にしないといけない。
 個人の責任というところに話を持っていったり、通り一遍の説教でなんとかしようとするのは、この病気を理解していない(か、番組のネタにしようとしている)人間のやることだ。
 キミたちは糖尿病の患者に「血糖値ぐらい意志の力でコントロールしなさい」と言うか?
 あるいは胃潰瘍の患者をつかまえて「お前は潰瘍に逃げ込んでいるんだ」と決め付けるのか?

 アルコール依存症は、「飲んでしまう」病気だ。
 精神病なのである。
 彼女の飲酒癖を責めるのは、鬱病患者の暗さを責めるのと同じことだし、心臓病患者の血圧を断罪するのと少しもかわらない。
 まず、患者本人がきちんとした病識を持つのが第一歩だ。
 意志や習慣の問題で片付けている限り事態は悪くなるばかりだ。
 患者は
「これは病気なんだ。オレの意志の力で克服できるようなものではない」
 ということをしっかり認識しなければいけないし、医者は
「これは病気です。自分の飲酒癖について過剰な罪悪感を抱くのは治療にとってマイナスです」
 ということを繰り返し教えないといけない。
 なんとなれば、罪悪感そのものも症状のひとつであり、原因のひとつだからだ。

 こんなことはインテリさんぞろいのテレビ局の人間ならわかっているはずだ。
 が、連中は「酒好きの意志薄弱な女」「自分勝手な理屈を並べる酒浸りの女房」をさらし者にして公開の場で断罪することの方を選んだ。

 彼女はきっとひどい気分だろう。
 死んだ方がマシだと思っていることだろう。
 屈辱、自責、落胆、自己嫌悪、自己憐憫、憎しみ……どれも飲酒発作の喚起にとっては理想的な条件だ。

 まったく。
 

3月2日 火曜日 晴れ
 プレイステーション2発表。
 すごい。
 > プレステ2は、東芝と共同開発し、先月米国で開催された電子技術関連会議で発表し
>た128ビットCPU(クロック周波数300MHz)を搭載。メモリーには32MBのダイレクトラム
>バスを採用した。またDRAMを混載した2560ビットのグラフィックプロセッサーも専用に
>開発して搭載する。チップの浮動小数点計算能力は毎秒6.2GFLOPS、3次元CG座標演算性
>能は毎秒6600万ポリゴン。メディアはCD-ROM、DVD-ROMを使いMPEG2をサポートしている
>ためハード性能上はDVDプレーヤーとしても使える。
>
> またI/OインターフェースとしてIEEE1394、USBに加えてPCカードスロットを装備し、
>通信機能はPCカードでサポートする。「価格については未定」としているが、チップの
>開発投資だけで200億円に達しており、値付けが注目される。(毎日新聞より)


 スペックを見る限りとんでもない代物だ。
 こういうマシンのスペックとしてFLPSだなんていう単位(スーパーコンピュータ専用の単位だと思ってました)が使われていること自体が  テレビのニュース映像で見たデモ映像もとんでもなかった。
 リアルタイムの演算で描かれたポリゴンがほとんど実写レベルの滑らかさで動いている。
 すごい。
 わくわくする。
 CPUのクロック数だとかインターフェースの転送速度の数値が上がったという情報を聞くと、なんだかそれだけでうれしくなってくる。
 別にだからって私に何の具体的な利益がころがりこんでくるわけでもないんだけど、このテの技術の進歩は、わがことのようにうれしい。
 どうしてだろう。
 ファンなのか?
 そうかもしれない。
 こういう最新の技術情報を聞いた時の気分は、サッカーのユース代表や浦和レッズの有望選手情報を聞いた時の気分とほとんど同じだ。

 うむ。
 どうやらオレはデジタル技術ファンであるようだ。
 それで、環境だとかの話されると機嫌が悪くなるんだな。

 正直に言おう。
 オレは、コンピュータの速度向上のためなら半導体の生産過程で工場排水に有害な重金属が流出したってかまわないと思っている。
 わかっている。オレは間違っている。
 9秒7で走れるんなら筋肉増強剤の副作用で早死にしたっていいと考える陸上選手は間違っている。
 ホームランの飛距離を伸ばすために肝臓に負担のかかる薬物を摂取する野球選手は間違っている。
 わかってるよ。
 でも、向上心ってのはそういうもんじゃないのか?
 目的のためには手段を選ばないんだからして、向上のためには堕落も辞さないのが本当じゃないのか?
 えっ?
 視野が狭いって?
 何を言ってるんだ?
 向上心ってのはそもそも視野狭窄の別名だぜ。


3月3日 水曜日 晴れ
 巣鴨。
 20年前とあまり変わっていない。
 駅裏のピンサロ街は縮小していたが、基本的なムードは同じだ。
 ゲームセンター「コメット」も名前が変わっていたが元の場所で営業している。
 大塚から巣鴨、駒込あたりはどうやらバブルの洗礼を受けなかったようだ。


3月4日 木曜日 晴れ
 朝から慈恵医大病院に出動。
 眼科は相変わらず混んでいる。
 泌尿器科も同じ。どこもかしこも老人でいっぱいだ。
 白内障を患う年齢まで生きているということは、喜ぶべきことなのだろうか?

 自然の中で生きてる動物は歯が弱るか擦り減ってくると、徐々に食物を消化できなくなって、じきに死んでしまう。
 であるからして、彼らは白内障だの前立腺肥大だのガンだのといった老人性の疾患とは無縁だ。
 つまり健康なうちに死ぬわけだ。

 健康な死。
 イコール健康な生。
 彼らは死の瞬間まで健康だ。

 人間もそうした方が良いのかもしれない。
 生まれて、14歳で子供を作って、35歳で虫歯で死ぬ。
 シンプルで良いかもしれない。
 
 そのためには学校で勉強するとかいった余計な過程は省かねばならない。
 なにしろ、35歳で死ぬわけだから、急いで子孫を作らないといけない。

 文明人が晩婚になるのは、長生きのせいだろうか?
 それとも教育期間の異常な長さのせいなのか?
 いずれにしろ、引き伸ばされた思春期の中にいる若い連中は不幸だと思う。
 思えばオレ自身もこの時代は不幸だった。
 
 おそらく、生物学的には15歳前後から20歳ぐらいまでが生殖にとって最も適した時期であり、だからこそ性的な欲求も激しい。
 ところが、一方で文明国のティーンエイジャーは事実上セックスを禁じられている。というよりも、この年齢での妊娠にとてつもなくデカいリスクがともなうことになっている。

 さて他方、結婚は性的な形式としてではなく、社会的な契約として、また経済的な単位として、あるいは法的な強制として、もしくは文学的な幻想として、単純な性行為とは縁遠くなりつつある年齢の人間たちにふりかかってくる。
 ……やめよう。
 大論文になってしまう。
 結論のない大論文。
 居酒屋トーク。
 やめよう。


3月5日 金曜日 晴れ
 歯医者。
 歯石を取った。
 
 北米マツダがセクハラ訴訟で負けて、アメリカの連邦地裁陪審で5億4000万円の支払を命じられたらしい。
 たった一人の女性に対して5億4000万円。
 どういうことなんだろう?
 具体的に何があったのだろう?
 身体に触ったというのは、どういう状況で、誰がどんなふうに触ったのだろう。
 触った野郎がいたのだとして、どうしてその男の個人的な犯罪でなく、北米マツダという会社の犯罪になるのだろう?
 あるいは単なる触り魔の犯罪ではなく、社を挙げての悪質な何かがあったのだろうか?

 思うに、この訴訟において、原告と被告の間には3つの対立軸がある。
 第一に男性対女性という性的な対立。
 第二に雇用者と労働者という労使対立。
 第三に日本人と米国人という人種的ないしは文化的な対立。
 これら3つの対立のうちのどれ(あるいは全部?)が本当の焦点だったのかは、新聞記事を見ただけでは何もわからない。
 しかるべきジャーナリストがきちんと取材したら、この事件の背景にはきっと面白いことがいっぱい隠れていると思う。


3月6日 土曜日 晴れ
 Jリーグ開幕。
 この日にタイミングを合わせたように、読売新聞が「スポーツ人気調査」なる奇妙なアンケート結果を発表している。
●どのスポーツが好きですか?
プロ野球  57.0%
高校野球  36.6%
…………
プロサッカー 9.6%

●好きなJリーグチーム
鹿島 3.9%
浦和 2.2%
興味がない 47.8% 
 なるほど。
 しかし、こんな数字に意味があるんだろうか?
 フランチャイズに基盤を置くことを明言し、地方との密着を志向しているJリーグをつかまえて、その全国的な人気を問題にするのはフェアじゃないんではなかろうか。
 ヨミウリがこういうデータの取り方をするなら、こっち(って誰だ?)にだってやり方があるぞ。
 たとえば、全世界の百数十カ国でスポーツの人気調査をやってみれば、第一位は文句無しにサッカーだ。
 知名度にしたって、国際標準からすれば松井や松坂よりはナカタやカズの方が断然有名だぞ。

 ともかく、浦和レッズの人気は、浦和ローカルであって一向にかまわないし、むしろそうでなければ困る。
 ローカル人気だからこそスタジアムに足を運ぶ観客と選手の間に緊密な関係が醸成されるのであり、また、ローカルに根ざしたスポーツだからこそ地域の共同体意識やスポーツ文化(ってイヤな言葉だけどさ)の育成に貢献できるのである。
 であるからしてわれらがプロサッカーは新聞の拡販だの企業の知名度アップだののために興業されているプロ野球とは、そもそもまったく性質の違うものなのだ。
 わかるか?ナベツネよ。
 企業によるスポーツ利用がプロ野球。
 スポーツによる企業運営がプロサッカー。
 似ているようで全然違うぞ。
 金銭を媒介とした性交渉が売春。
 性交渉を媒介とした金銭関係が結婚。
 どうだ?全然違うだろうが(同じか?)

 連中はスポーツ企業と企業スポーツの違いもわかっていないのだろうか?
 それともわかっていながらあえてこういう調査結果を突きつけて何かの役に立てようと(たとえば新聞広告の営業とか、巨人戦チケットのハク付けとか)してるのか?

 調査対象もヘンだ。
「個別訪問の面接聴取」で「20歳以下は調査対象外」。
 ってことは、これ、「主婦」ってことになりませんか?
 こんなのが「国民」の代表ですか?
 昼間っから見も知らぬ面接調査員の相手するようなお人好しのヒマ人(年寄りかおばさんだよな、どうしたって)がフォーカスグループってことじゃ、とてもじゃないけど公平な調査とは言えませんよ。
 で、そういう人たちがいきなり「どのスポーツが好きですか?」って聞かれたら、そりゃあんた「そーねえ、別にどれってこともないけど、テレビでよくみるのは野球かしらねえ」ってことになるじゃないですか。
 ともかくまあ、そんなわけでわが日本の五大スポーツは
1.プロ野球
2.大相撲
3.高校野球
4.駅伝
5.マラソン
 なんだそうですわ。

 ったく。

 結局、アンケートは「アンケートに応じるようなバカ」の意見でできあがっているってわけだ。

 どうして日本の新聞は統計学についてこんなにもワキが甘いんだろう。
 それとも何か意図があるのか?
 えっ、ナベツネよ。

●浦和 vs G大阪
 2-1で浦和の勝ち。
 福田の1点目はDFを2人かわして、さらにGKも抜いてのもの。素晴らしかった。
 2点目は小野クンのスルーパスを胸でワントラップした福永が右足ボレーでゲット。
 盛田はまだ機能していなかったが、新人DFの池田は大変によろしい。
 

 夜、スポーツニュースをハシゴ。
 テレ東のスポーツニュースのサッカーコーナーの方がTBSの「スーパーサッカー」より充実している感じがした。
 柳沢は、得点シーンしか見なかったが、良かった。