1月24日 日曜日 曇りのち雨
 千代大海優勝。
 北勝海を思わせるやぶれかぶれな突進も魅力だが、なにより、塩を撒く時や力水を受ける時に見せる、そこはかとない所作のぞんざいさが良い。

 表情も良い。
 勝ち上がってくる力士にはどこか茫洋としたところがある。
 無双山もそうだった。
 かつての武蔵丸や安芸の島にも同じ匂いがあった。
 伸び盛りの相撲取りは、いつの時代も、自分が何者なのかを判じかねているようなきょとんとした表情で勝ちすすんでいく。
 おそらく、自分が何者であるのかを知った時、力士は成長をやめるのだろう。
 とすると、いまだに空虚な表情で土俵にたっている貴乃花には、いまなお成長の余地が残されているのだろうか?
 いや、
 貴乃花の空虚は、成長の余地とか未だ埋められずにいる空き地といったようなものではない。
 貴乃花の空虚は文字どおりの空虚で、おそらくそれは脳細胞の壊死のような物理的な出来事と直接に関連している。
 喪失?
 ゼロであったものが一体なにを失うというのだ?
 いや。
 喪失といえば喪失かもしれない。
 貴乃花は子供時代を喪失した。
 にもかかわらず大人になっていない。
 っていうことは、あれは抜け殻なんだな。

 夕方「rules for revolutionaries」が届く。
 うむ。
 

1月25日 月曜日 雨
 雨だ。
 
 午後5時半よりT編集長と会談。
 例の訴訟について。
 
 何の訴訟かって?
 ははは。
 内緒だよ。


1月26日 火曜日 晴れ
 久しぶりにきれいに晴れた。
 妻の病状はようやく回復に向かってきたようだ。
 毎日夕方になると39度近い熱が出ていたのが、きょうは37度台で落ち着いている。

 しかし、油断は禁物だ。
寝て食って 倦まず焦らず働かず 腹をくくってたかをくくらず

 といったところが、まあ病後の養生訓であろう。

 いい暮らしだなあ。

 ライターの処世訓はちょっと違う。
寝ず呑まず 怖じず奢らずあきらめず たかをくくって首をくくらず

 守れるだろうか。


1月27日 水曜日 晴れ
 北区の中央図書館に所用で行った。
 20年ぶりだ。
 ざっと見たところでは、あまり変わった様子はない。
 「電算室」と書いてあるドアがあったが一般人の立ち入りはできないようだった。
 どんな電算機が置いてあるのだろうか。
 やっぱりF士通とかH立とかの古い機械だろうか。
 自分の著書が置いてあるかどうかちょっと気になったが、調べなかった。
 あったらちょっと厭だし、なかったらとても厭だから。

 午後から読書。
 本を読んでいるということはつまり何かから逃げているということであって、具体的に言うと締め切りが重なっているわけで……
 仕事に戻ろう。


1月28日 木曜日 晴れ
 好天。
 寒中だというのにこの暖かさは何だろう。

 学研が出しているCD-ROMの国語辞典「Super日本語大辞典」を購入。定価は9300円だが、新宿のビックカメラパソコン館で8750円売っていた。
 国語、古語、漢和、ことわざ、類義語の辞典が統合されている。
 古語があるのが良い。
 季語がひけたりするのもうれしい。
 唯一の欠点はどうやらリソースを食いすぎること。
 常駐させたまま他のアプリと共用していると突然フリーズすることがある。
 もしかしたら、この欠点はかなり致命的かもしれない。
 唯一の欠点って、往々にして致命的だからなあ。


1月29日 金曜日 晴れ
 例の「地域振興券」の交付が始まったそうだ。
 先陣を切ったのは島根県の浜田市。
 なるほど。
 竹下の地元だ。

 95年5月のノートを発見。
 アル中治療のために向精神薬を服用していた時期だ。
 はははは。
 躁状態だ。
 買い物メモから保育園の父母会の感想まで、あらゆることが事細かに記録してある。
 どうかしている。
 多色ボールペンを駆使した多重的な書き込み。
 一日に何回も書き加えられ、その度に詳細さを増すイグアナ購入計画。
 パラノイアだ。
 しかも柄にもなく正義に目覚めたようで、オウム信者の微罪逮捕だとかにえらく憤慨している。
 オウムの言う「ハルマゲドン」は確かに典型的なパニック反応だが、それを受け止めた側の人々もまったく同じパニックに陥っている。
「事はあまりにも重大かつ急を要するのであるからして、この際、微罪逮捕もやむを得ない」とする立場が既にパニックなのである。
 非常時には超法規的な措置も……か?
 法というのはもともと非常時のためのものじゃないのか?
 オレもパニックだったんだな。


1月30日 土曜日 晴れ
 高島忠男がうつ病を告白したんだそうだ。
 えっ?
 高島忠男が?
 うつ病?
 うそだろ?
 あの満面笑みのハッピーおじさんが抑鬱状態?
 あの、「セシボン」とかいう日本一お気楽なニックネームの持ち主であるあの高島忠男さんが……
 あの、360度どの角度から見ても自己肯定の感情以外何も見出せないあのおやじが……

 まったく。
 昔、どこかの雑誌にこの人についてちょっと書いたことがある。
「こんなにも裏表のないニャハニャハの笑顔の持ち主は、この人を除けばただ長嶋茂雄がいるばかりだ」
 とかなんとか……

 うーむ。
 高島忠男の心に人知れぬ憂鬱があったなんて。
 オレもまだまだ甘い。

 人間の心は、謎だ。
 いまさらこんな陳腐なセリフを吐かねばならないのは大いに不覚ではある。
 が、
 人間は、謎だ。
 またひとつ、馬鹿になった。