1月17日 日曜日 晴れ
 高校のクラス会(といっても出席は6人)のはずだったが病気を理由に欠席した。
 行きたくなかったのだ。
 いまさら何を話せばいいというんだ?
 過去の話は退屈だし、現在の話は憂鬱なだけだ。
 といって、通り一遍の世間話で話が弾むわけでもない。
 だって、もはやまるで別な世界の住人なわけなんだし、無理矢理話を合わせなければならない利害関係すらないんだから。

 で、本当に熱が出た。
 歯も痛みはじめた。
 昔からオレはヘンに義理堅いところがある。
 仮病を使うと必ずといって良いほど本当の病気になる。
 律義なのか、小心なのか、それとも心底ウソをつくことがきらいなのか。
 いずれにしろ過剰適応は不適応の一形態だってことなんだろう。


1月18日 月曜日 晴れ
 妻のインフルエンザが悪化している。
 起き抜けでいきなり39度6分の発熱。
 クリニックで点滴を受けている最中に咳き込んで、一瞬呼吸不全に陥った。

 医者の話ではマイコプラズマ肺炎の疑いがあるらしく、明日、検査の結果が出るという。

「また咳き込んで止まらなくなった場合、どうしたらいいんでしょう?」
「うーん、どうしようもないねえ。ま、湿度を高めにして……」
「加湿器とかは特に無いんですが、そういう場合はどうしますか?」
「うーん、どうしようもないねえ」
「はあ」
「まあ、時期が来るまでは治らないから」
「……はあ」
「ま、我慢するほかどうしようもないねえ」

 医者の正直は、ちょっと困る。
 確かに、どうしようもないんだろうけど。 


1月19日 火曜日 曇り一時雨
昼過ぎから父母参観。
引き続き父母会。
スリッパを忘れたのではだしで過ごした。
しもやけができた。
バカみたいだ。
学校は変わらない。
親になってもやることは同じだ。
黙って人の話を聞く能力が常に期待されている。
バカみたいだ。
2時間黙って座っていた。
気が狂いそうだった。

家に帰っても事態は同じだ。
家事一切と肩代わりの入力仕事。
家庭というのは おそろしく非効率なシステムだ。
ねずみ車で発電しているみたいだ


1月20日 水曜日 曇り
妻はマイコプラズマ肺炎であることが確定。
入院は回避できた。
が、戦力になるわけではない。

オレが軍曹だったら
自軍の傷病兵を真っ先に撃つと思う。
次にいけ好かない上官の背中に銃剣の切っ先を埋め込み
その次に生意気な部下を手榴弾で片づけるだろう。
とても敵にまでは手が回らない。

敵が憎くないのかって?
だって、見たこともないんだぜ。


1月21日 木曜日 晴れ
午前中、慈恵医大病院に出動。
いつになく混んでいたのはやはりインフルエンザのせいだろうか。
風邪でも大学病院に行くという人々がけっこういるのかもしれない。

この1週間ほど、テレビすら観ていない。
何もできない。

1月22日 金曜日 晴れ
「もののけ姫」をちょっとだけ観た。
なんだかなあ。
「しゃべる動物」にはどうしても共感できない。
ヘンだよ。

言いたいことはわからないでもないけど、ちょっと思弁的すぎないか?
宮崎駿の世代の人間ってのはどうしてもああいう感じになるんだろうか。
全共闘の人々が振り上げたこぶしは、結局フェミニズムと環境にしか着地点を見出せないんだろうか。

振り上げたこぶしは
誰かを殴るほかに使い道がないんじゃないのか?
殴る相手はどうしたんだ?
消えたのか?
それとも、デカ過ぎてどうにもならないのか?

でないとすると、彼らは 殴るべき相手が自分であることに気付いたのだろうか?

違う。
こぶしは、ただ、目的もなく振り上げられただけなのだ。
だから、彼らの振り上げられたこぶしは
解除されるべきなのだ。

どういうふうに?
うーん。
たとえば、中空で3回ほどくるくる回して
それから握ったこぶしを開くのはどうだろう。

うん。
そうだよ。
くるくるぱあ、だ。

でも、師よ。
くるくるぱあをキメたその後に
私は誰を指差したら良いのでしょう。
やはり、自分のこめかみに人差し指を当てるべきなのでしょうか。
それとも、天を指すのでしょうか?


1月23日 土曜日 晴れのち曇り
今週の週刊文春にランディ・バースのインタビューが載っている。
去年の大リーグは何かおかしかった。
一年に七十本のホームランなんてもう二度とこない。ピッチャーはマグワイアに打たれるのを楽しんでいるみたいに見えたな。ストレートしか打てない男にそれしか投げないんだからな。
バースよ。
君の言う通りだと思うぞ。
「男らしくストレートで勝負だあ」
という愚直なマチズモが、白人のマグワイアに対してだけ選択的に発動されたのは、おそらく偶然ではない。
合衆国の集合無意識は、ドミニカの黒人に対して男らしく立ち向かう必要をあまり感じなかった。
それ以上に、ドミニカの黒人が偉大なるベーブルースの記録を破って新しい伝説になることを好まなかった。

うがちすぎか?
そうでもないと思うぞ。
ランディ・バースはよくわかっている。
彼が54本目のホームランを打ったあと
日本のピッチャーは、全然ストライクを投げてこなくなった。
その時のことをランディは決して忘れていない。
だからこそ彼はサミー・ソーサの上に起こった不幸ななりゆきを、偶然と思ってはいないのだ。
もしマグワイアが日本でプレーすれば、今の打ち方じゃあ日本のノラリクラリ投法に翻弄されるだろう。
バースよ。
君の言う通りだ。
あのポパイ親父のバットは、ストライクゾーンから逃げていくスライダーにカスりもしないだろう。
ああ
ナベツネのクソじじいが
トチ狂ってマグアイアを獲らないだろうか。
そうなったら素敵だと思う
そして、アメリカの誇りでありメジャーの至宝たるマグワイアが
たとえば、ヤクルト投手陣の二線級五人リレーに五つの三振をもって討ち取られるのだとしたら
その夜こそ
日本経済が本当に回復の道を歩み始める時であるだろう。

どうだ、ナベツネよ。
日本の誇りのために
一肌ぬがないか?