1999年 1月1日 金曜日 晴れ
●天皇杯決勝 横浜フリューゲルスVS清水エスパルス
2−1でフリューゲルスが優勝。
まあ、成り行きとしてはこの結果が必然なのかもしれない。
前半、あれだけ攻めまくったエスパルスが1点しか取れなかったのは、あるいは心のどこかに遠慮があったのだろう。
遠慮がなかったとしても、やはりモチベーションに若干の曇りがなかったとは言えまい。
「おい、これで勝ったらシラケ山の大将だぜ」
「だよな。白虎隊を殲滅した官軍が誉められたなんて話聞いたことないしなあ」
起き抜けより体調不良。
夕方体温を測ると37.7度。
8時過ぎに就寝。


1月2日 土曜日 晴れ
急遽妻子を柏崎まで送ることになった。
午前10時け出発。
途中、長岡インターから先で吹雪のためチェーンを装着。
北陸道西山インターの手前でスピン。
チェーンの装着が違っていたようだ。
というのは、あとでスタンドのオヤジに指摘されてはじめて気付いた(「こんなの見たことないよ」とオヤジは言った)。
マニュアルを読まなかったのがいけないのだろう。
そんなことはわかっている。
弁解をさせてもらえるなら、雪の降る高速道路の路側帯で慣れない力仕事に従事している男である私は、とてもマニュアルを読むような精神状態ではなかったのだ。
が、考えてみればチェーンというやつは雪の中で付けることに決まっている。
スピンの結果、中央分離帯にぶつかってクルマの左後部をへこました。
とはいえ、高速道路でスピンをしておいて怪我もなく済んだのは例によって不幸中の幸いってやつだろう。

不幸中の幸い。
ふん。
アオキがいつか言っていた「運の良い夢」みたいだ。

夢の中で、アオキはヘビに噛まれる。
「いかん!」
アオキは一瞬絶望する。
しかし、アオキはヘビを見てこう思い直したというのだ。
「おお、これはコブラだ。よかったよかった。コブラ科の毒は神経毒だから麻痺しながら呼吸不全で楽に死ねる。マムシだったらこうは行かない。あいつの毒は血液毒だから猛烈な痛みの中で末端から徐々に壊死しなければならない。よかったよかった」


1月3日 日曜日 晴れ
実家の風呂の掃除。
湯の出口のフィルターを外そうとしたら、水道管との接続から丸ごと外れてしまった。
なるほど。
マニュアルを読まなかったのがよくなかったようだ。
教訓を生かせない人間は同じ苦難に直面する。
というのが今回の教訓。


1月4日 月曜日 晴れ
寝て過ごした。
途中、高校サッカーを観てまた寝た。
夜中になってソニックを少し進めてまた寝た。


1月5日 火曜日 晴れ
寒い。
テレビをつけてみる。
呆然としてしまう。
何の騒ぎだ?
いったい誰を罰しているつもりなんだ?
それとも なにかの陰謀なのか?
でないとすると、暮れからこっちテレビの連中がずっと晴れ着を着たままなのは、不自然な狂騒状態を演じることによって我々に警告を与えているからなのか?
あれは警鐘なのか?

いや、あるいは間違っているのは、オレの方なのかもしれない。
みんなが面白がっているんだから、これが世の中の正統ってことなんだろう。
そう。
みんなこういうのが好きなのだ。
この国の善男善女は振り袖を着た大学出のアナウンサーが顔の半分を口にして笑うみたいな景色が大好きなのだ。
マジョリティーには誰も勝てない。

奥様はマジョリティー

いや、申し訳ない。

落ちが先にあったわけじゃないんだ。

奥様はマジよ。
ははは。


1月6日 水曜日 晴れ
慈恵医大病院に出動。
都内の渋滞はまだ本格化していないように見える。
昼過ぎに帰宅。
長い昼寝。


1月7日 木曜日 晴れのち曇り
例の自損事故について日産のディーラーに修理の見積もりを出させたところ、一通り直すと28万いくらかになるという。
げげげ。
見積書の内容を見ると、バンパーの総とっかえ(ほとんど無傷なんだけどなあ)とか、ちょっと無駄な気がする。
工賃も全般に高い。


というわけで、クルマ事情(というかトラブル全般)に詳しいカメラマンのA氏に相談してみた。
「戸田の方に顔のきく修理屋があるよ」
 ということなので、そこの見積もりも出してもらうことにする。

夕刻、S氏が来訪。
DTP事情などを解説。


1月8日 金曜日 晴れ 一時雪
寒波襲来。
昼過ぎに一瞬小雪がちらつく。
なるほどね。
……そういう筋書きだったわけだ。
冬将軍と貧乏神の連携。
貧寒相和するところのスルタン=カリフ制

雪を「空からの手紙」だと言ったのは誰だったろうか。
文盲か?そいつは。
それとも、脅迫状の意味で言ったのか?
天に返事を書くにはどうしたら良いんだ?
唾を吐くのか?

戸田までクルマ修理の見積もりに出かけた。
修理屋のオヤジによれば、日産の見積もりはあれで妥当らしい。
「ウチでやっても同じだよ」
「っていうより、この金額じゃできないなあ」
 ああそうでしたか。
 高いと思ったのは、オレがケチだっただけなんだな、つまり。
部品代はともかく、工賃がいかにも高いと判断したのだが、どうやらこちらの認識不足だったようだ。
生身の人間が手仕事をするのだから、ああいう金額になるのは仕方がないのだ。

クルマのような複雑な製品においても、モノを言うのは人件費だ。
ちょっと考えてみれば見当がつくはずの話ではないか。

新製品としてのクルマの製造工程は、ほぼ完全にロボット化されている。
ゆえに、人件費の占める割合はさほど高くない。
というよりも、日本のような労賃の高い国では、製造原価に占める人件費の割合をぎりぎりまで落さないとそもそも工業製品は生き残れないのである。
が、修理というのは、ほぼ丸ごと人手による作業だ。
ってことは、修理費は人件費の高騰をモロに反映する分野なわけで、高いのは致し方ない。
また、修理は、どこでビッグバンが起ころうと、国際競争の波に洗われない。
だっていくら安いからってクアラルンプールの修理屋に板金を頼むわけにもいかないじゃないか。

 パソコンの世界では、たとえばICを修理するなんてことはまったく考慮にすら値しない。
 仮に1個20円のICを人力で修理したら(そんなことが可能だとして)、数万円の経費がかかるはずだ。
 ま、デジタル製品の場合ほど極端ではないにしても、クルマもまた
「直すより買い換えた方が安いっすよ」
 の世界のマシンになりつつあるわけだ。

 きっと人間だって同じだ。
 コストから考えれば、中高年にコンピュータ教育をするよりは、そういうオヤジ社員はすっぱりクビにして、若手のオタクを雇い入れた方が良いに決まっている。

 これ以上は言うまい。
 オレも同じだとかなんとか……そんなことを言ってみてもはじまらない。
 寝よう。


1月9日 土曜日 晴れ
午前10時より昼寝。
目覚めてみると午後5時を過ぎている。
落胆して再び昼寝。
再び起きたのは午後10時過ぎ。

ってことは、昨日から通算で18時間寝たことになる。

どうしてそんなに寝るんですかって?
ふん。
説明なんかしないよ。
どうせ言って分かることではない。
酒を飲んでいた頃なら、きっと今ごろは泥酔している。
つまり、そういう気分だってことだ。
いまは、呑む代わりに眠ることにしている。
こういう時は、なにはともあれ、寝る。

だって、ほかにどうしようがある?
憂悶――だなんて、いまさらこんな言葉は使いたくないが、人間40歳を過ぎたからといって必ずしも人格が完成するわけではないのだよ。
落ち着いているように見えるかもしれないが、見せかけが上手になっただけだ。
ツラの皮をめくった中身は、そこいらへんのガキと同じなのだ。
そう。
オヤジにだって悩みはある。
17歳の小僧みたいに自分を律しきれなくなる時もある。
ただ、40男の憂いは、水分を欠いていて、傍目から見て美しくない。
それだけの違いなのだ。
自棄酒と不貞寝。
似ているようでいて微妙に違うのは不貞寝の方が事後が良いことだ。
と、そう信じてもう一度眠ることにしよう。
睡眠――生還可能な自殺。
うむ。
パートタイムの死。
素敵だ。