11月7日 日曜日 くもり

 「サンデーモーニング」(TBS)を観た。
 半年ぶりぐらいだろうか。
 というよりも、非サッカー関連番組を観ること自体が、かなり久しぶりだ。
 つまらないとか面白いとか言う以前に、あきれてしまった。
 こんなものを朝から観ている人々が平成日本のマジョリティーなんだろうか。
 とすると、私は、日本の現実から排除されているのだろうか。
 オレは、異邦人なんだろうか。
 世間が「サンデーモーニング」の視聴者層だけでできあがっているのだとすると、その彼らにとって、オレは、オウム信者とあんまり変わらないはずだ。
 おい、本当にそうなのか?
 セキグチヒロシは、本当にコモンセンスの結晶体で、コメンテーターの後ろで名札をつけてにこにこしているねえちゃんたちみたいなぐあいに、オレもあらゆる話題に感心してなきゃならないのか?

 土日の午前中に放映される番組は、一週間の出来事を一通り振り返って、ゲストのコメンテーターたちが総括するみたいな作りのものが多い。まあ、「休日のお父さん」向けってことだろう。
 でも、オレ、オヤジじゃないし。
 いや、年齢的には完全なオヤジだ。が、テレビ番組の製作者側が想定しているところの「日曜日に朝からテレビ観てるお父さん」ではないのだ。
 つまり、週日に毎日出勤しているサラリーマンでもないし、野球好きでもないってことだ。
 むしろ、そうした実態からすれば、おばさんに近い。
 毎日家にいて、献立のこととかを心配しながら、野菜の値段に詳しかったりするわけだからね。
 でも、オレはおばさんではない。
 もちろん、若者なんかじゃぜんぜんないし、年寄りというわけでもない。
 ってことは、私のような人間は、テレビの側が想定しているカテゴリーから漏れているわけだ。
 観る番組が無いのも当然だ。

 以前、誰だったかが「パリーグのファンをやっているとテレビが嫌いになる」という話をしていた(つまり、テレビはどれもこれも巨人ファン向けにできているから)が、サッカーファンをやっているともっと強烈に嫌いになる。
 だって、連中はサッカーなんか眼中にないんだから。
 彼らが問題にしているのは、徹頭徹尾マジョリティーだけなのだ。
 まったく。
 実際の話、現実に「典型的なマジョリティー」なんてものが存在しているんだろうか。
 テレビ局が採用しているカテゴライズは有効なのだろうか?
 首都圏在住の30代のサラリーマンで、家族は4人。趣味はゴルフとカラオケで、クルマはアコード。親の代からの巨人ファンで、晩酌は一日一合だが、出た大学は二流で、小学校2年生の娘の運動会には8ミリビデオを持参して出かけ、庶務課の29歳のOLと1回だけ不倫の経験があり、管理職になりたいとは思っているがプルーストは読んだことがなく、オブチは信用していないがそれはともかく最近胃の調子を気にしている。
 いや、おっしゃる通り。こういうヤツはたくさんいると思う。
 でも、だからって、この男(佐藤明・仮名)に向けて番組を作っていれば大丈夫ってことなのか?
 たとえば雑誌の世界のカテゴリーはずっとキメが細かいぞ。
 野球を例にとれば、まず野球ファン全般に向けて「週刊ベースボール」がある一方で、巨人ファン限定には「月刊ジャイアンツ」が用意されている。部数は少ないがドラゴンズファン向けの雑誌やタイガース雑誌だってきちんと存在している。もちろん、その周辺には高橋ヨシノブの個人ムックだとかもあれば、高校野球だのメジャーリーグだのをメインにしたマニア向けの雑誌も出版されている。
 テレビには総合誌しかない。
 こんなことで良いのか?
 通勤電車の一車両に乗っている人間が、全員、一人残らず、同じ背広を着て同じ雑誌を読んでいるとうしたらどうだ?
 こりゃ相当に不気味な景色だぜ。昔やってた目薬のCMみたいじゃないか。
 が、実際に、テレビは、そういうふうに作られている。あらゆる番組が、佐藤明をターゲットにしている。
 ウィークデーの昼間はおばさんに、深夜は若者に向けて開放されているが、このカテゴライズだっておそろしく大雑把なものだ。
 であるから、たとえばオレみたいな男は  「どうせこの時間帯にテレビ観てる層はおばさんに決まっている」
 という決めつけのために、ウィクデーの午後の番組からほぼ完全に排除されている。
 いや、当のおばさんだってこのカテゴリーには反発を感じていると思う。
「ほーら、どうせあんたたちは羽賀ケンジのスキャンダルとかが好きなんだろ」
 ってな調子で提供される情報にシラケている主婦は多いはずだ。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 雑誌は、少ない部数でも成り立つ余地がある(つまり、経費もそれだけ少なくなるからね)。が、視聴率の低いテレビ番組は、生き残りようがない――と、そういうことなのだろうか。
 で、日曜朝のテレビ番組は、事実上、すべて巨人ファンのオヤジに向けて作られることになる。
 いや、というよりも、政治経済から社会スポーツ芸能に至るまでのすべてを八方にらみに取り込みつつ、なおかつマイノリティーを徹底的に無視した番組が最も広い視聴者層をカバーする優秀な番組だという理屈になるのか?
 まあ、少なくとも「サンデーモーニング」はそういう番組だな。
 サッカー五輪代表の話題は約10秒。
 関口ヒロシが大沢前日ハム監督(このヒトは人が好いからなのか、専門外の話を振られて、トンチンカンなことを言う役割を担っているようだ)に「どうです?」と聴いて「よかったんじゃねえの?3点とったんだっけ?」でおしまい。大沢さんの問いに答える人間はもちろん誰もいない。スタジオ沈黙。はいはい。わかってるってば、サッカー好きなオレたちはSM愛好家や鮒寿司フリークだとかとおんなじで変態なんだよね。うんうん。

 午後、昼寝中に来客。
 七五三の衣装を着せられた幼女が哀れだった。
 オレたちも似たようなものだ。
 誰もが、相手を型にハメようと思っている。
 一方には、型にハメられていないと落ちつかない連中がいる。
 サッカー五輪代表チームの面々には、そうなってほしくない。
 柳沢よ。
 突破だ!


11月8日 月曜日 くもり
 昨日の日記の記述について、「テレビがマジョリティーばかり相手にすることを批判していながら、マイノリティー向けの有効な代案を示していないのはなぜか」という主旨のメールをいただいた。
 勝手に引用すると、文面はこうなっている。
だとすると、コストを織り込み済みで、敢えて、
平均以外のターゲット向けの番組づくりをするには、
どうしたらいいとお考えなのでしょうか?
 うーむ。
 痛いところを突かれました。
 不可能だと思います。
 って、これ、答えになってませんね。
 すんません。
 結局、私のテレビ批判がまっとうなものではでなかったということです。
 わかりやすく申し上げますと、キャットフードを食べて「マズい」とケチをつけている男は、「じゃあ食うなよ」と言われたら一言もないのですね。
 いや、キャットフードという言い方は失礼かもしれません。
 むしろ、テレビの番組は、公園の地面にタダでバラ撒かれている鳩の豆みたいなものです。
 どっちみち、食べて批評するようなものじゃないんですね。
 
 そもそもマイノリティーというのは、テレビの客筋ではない。
 私が地上派民放のプロデューサーだったとしたら、今彼らがやっていることと同じことをするだろう。
 具体的には、アオリとヤラセとゴシップとおっぱいを時間帯ごとに並べる手口だね。
 だって、それ以外にどうしようもないじゃないか。
 つまり、テレビは治癒不能だってことだ。
 現状のテレビの番組は、あくまでもCMのおまけであり、対象とする視聴者層も、無料入場者だ。
 ってことは、ペイテレビ(有料テレビ)ならいざしらず、タダで見物しようという志の低い連中に向けて番組を作っている以上、少数の熱心な視聴者を当てにするよりは、多数の人間がなんとなくでもいいからチャンネルを合わせてくれるような番組作りをせざるを得ないわけだ。
 視聴率という数字が、スポンサーのスポットCM料金に反映して、それが局の収入になるという状況は、舞台を持たない大道芸人が置かれている立場よりもさらに悲惨なものなのかもしれない。
 仮に、観客からの投げ銭を期待するなら多少は中身のある芸を見せる必要もあるだろうが、単にデカい人だかりを作った者の勝ちということなんだから、ヤラセの喧嘩をやってみるとか、血だらけで倒れて見せるとか、あるいは単にハダカになるとか、そういう安易な道に走るのももっともな話なのだ。
 じゃあ、そういうことで。
 

11月9日 火曜日 くもりのち雨
 asahi.comのトップページにヒロスエのホームページが顔を出している。
 ここしばらく消えていたので「秘密」のベタコケとともにトップページのリンクからハズれたのだろうと思っていたのだが、どうもそういうことでもないようだ。
 トップ見出しの横の枠のところに、ヒロスエの写真とHPのタイトル(cool! hだと)が配置してあって直筆のお返事
 という注釈がついている。
 ん?
 朝日新聞者におけるヒロスエの扱いはマサコ皇太子妃あたりと同列になっているのか?
「ヒロスエさまからありがたい直筆のお返事がきています。謹んで拝読するように」
 ですか?

 なんでも「広末発展会議」とかいう企画(今後、ヒロスエがどんな活動をしたら良いかをみんなで考えるんだそうだが、つまりは検閲を承諾した上でメールをよこせってことだろうか)に寄せられた読者からのメールに対する返事が掲載されているんだそうだ。

 読まなかった。
 だって、読もうが読むまいが、どっちにしてもこっちの負けだからね。
 はいはい。
 私が間違っておりました。
 ご発展のご様子、何よりです。

 それにしても、発展会議の企画担当者は、「発展」に「発展家」(発展:特に、酒色にふけること。「―家」←「岩波国語辞典」より)の含意があることに気づかなかったのだろうか?
 あるいはこれは「発展家のヒロスエさん」ということを暗示する持って回った皮肉なのだろうか。
「ちっくしょお、なーんでオレがこんな腐れアイドルのホームページ企画なんか考えなきゃなんねえんだよ」
 と、ホームページの制作企画を任された代理店の担当の兄ちゃんは、そういうふうに感じて、あえて鬱屈した皮肉をこめたネーミングを案出したのであろうか。
「広末発展家異義、か。うーん、いいねえ。エロ末そのものじゃん」
 なるほど。
 そう考えれば「cool! h」だかというわかりにくいホームページタイトルのナゾも解ける。
「冷然たる淫乱娘」
 なるほど。
 で、計略好きの事務所サイドには
「ええ、クールっていうのは、特にインターネットでは、カッコいいとか、アタマの良いという意味で使われているテクニカルタームです。それに涼子ちゃんの涼の字と涼しいイメージにもピッタリですし。で、hはもちろんヒロスエさんの頭文字です。あえてワセダの知的なイメージを強調するためにアルファベット一文字で象徴的に表現してみました」
 とかいったそれらしいプレゼンをカマして納得させる、と。まあ、赤子の手をヒネるようなもんだ。
 いいぞ、兄ちゃん。
 あんたなかなかウデが良いじゃないか。
 最近、メディアに載るヒロスエの写真を見ると、あえて不細工なアングルのものが選ばれるケースが多い気がするが、これも業界アンチ勢力の勃興を示す事態であるのかもしれない。
 とすると
「直筆のお返事」
 という一見して高飛車なタイトルのつけ方も、あるいは担当者がわざとやっているホメ殺しアンチ作戦なのかもしれない。

 がんばれ。


11月10日 水曜日 晴れ
 後楽園で打ち合わせ。
 外堀は埋まった。
 内堀は自分で埋めた。
 あとは炎上する天守閣の中でどこまで火事場の馬鹿力が出るかだ。


11月11日 木曜日 晴れ
 慈恵医大病院。
 こういう日に限って検査が立てこむ。
 夕刻より執筆に専念。
 リキむと持ち味が出ないことはわかっているのだが、リキまないと仕事にならない。
 柳沢よ。
 お前の気持ちが少しわかってきた気がするぞ。
 オレたちの突破口は、リキんだフェイントの先にあるのかもしれない。

11月12日 金曜日 晴れ
 誕生日。
 43歳になった。
 許永中についての原稿を脱稿。
 イラストもどうぞ。


11月13日 土曜日 晴れ
 原稿執筆。
 忙中の閑を盗んでサッカー観戦。

ball20.gifサッカー五輪最終予選 タイVS日本第二戦
 フジテレビにて観戦。CMを入れないフジは偉い。

 後半は、衛星第一で、加藤久さんの解説を楽しんだ。
 この人は異常な心配性で、日本がどんなに押し込んでいても、常にカウンターや中盤の間延びを警戒している。ディフェンダー出身者の面目躍如といったところですね。
 このゲームでは、さすがに4-0になったあたりから心配するのをやめたようだったが、代わりに、捨て鉢になったタイがラフプレーに走ることを警戒していた。
「大きなケガだけはしてほしくないです」
「あまりカサにかかって攻めない方が……」
 さすがに長い間代表のキャプテンマークを担ってきただけのことはある。
 幼児の水浴を見守る祖母の如き痛心と屈託。
 老婆心解説。
 みごとだ。