9月26日 日曜日 晴れ
 昨日に引き続き、ネットサーフィン。
 いや、快適さから行ってサーフィンというよりクルージングだな。
 とはいえ、夜の11時を過ぎるととたんに接続スピードが落ちる。こっちが384kbpsでつながっていても、サーバの側が混んでいる関係上、高速回線のメリットがなくなってしまうわけだ。
「ったく、貧乏テレホユーザーが群がってきやがるから遅くってしょうがねえや」
 と、一夜にしてネットエリートの気分になっている。
 蜘蛛の糸の端っこに餓鬼どもが群がっているのを見つけた時のカンダタの心境ってところか。

 うーむ。
 オレみたいな男はカネや権力を持たない方がいいのかもしれないな。
「おらおら、どけっていうんだよカローラの小僧どもめが。だいたい、ちまちました国産ファミリーセダンの分際で追い越し車線に乗る神経がわからねえぜ」
 と、ベンツのハンドルを握ったその日から、私はヤー公の運転を身につけるであろうし、文学賞なんか獲ったヒには目も当てられない。
「○○クン、キミねえ、この68ページの記事を読んでみなさい。ん? この貧乏ライターの助詞の使い方はなんだ? 直木賞作家のワタシが、こんな貧相な日本語を使う書き手と同じ雑誌に原稿を載せられると思うのか?」
 なーんて調子で編集部に圧力をかけるかもしれない。
「いや、そんなことありませんよ。オダジマさんは、下積みライターの苦労をよくご存知なわけだから、間違ってもそういうイヤミな威張りん坊にはなりませんって」
 わかってないね、キミも。
 貧乏ライターの苦労を知っているからこそ威張るんじゃないか。
 ためしにオレに日本エッセイストクラブ賞をよこしてみな。
 名刺に刷るよ、オレは。
 でもって年賀状を千枚ぐらい書くよ。
「おかげさまで、この度……」
 とか、幼稚園時代からの名簿を全部掘り出してきてさ。
 でもって、その年賀状の宛先になる連中っていうのが、これがまたどいつもこいつも、こっちが偉くなると急に昔から親しかったような顔をする俗物ぞろいでさ。オレはといえばそういうおべっか野郎の取り巻きに囲まれながら、ますます増長して、朝っぱらから嫁さんを殴るような男になっていくわけだ。

 ……うん。
 要らないな。
 賞は辞退するよ。
 せっかくだけど。

 名刺に刷ろう。
「日本エッセイストクラブ大賞事前辞退・小田嶋隆」
「潮ノンフィクション賞なんかハナもひっかけないライター・小田嶋隆」
「芥川賞・直木賞のノミネートを敢然と拒否し続ける・小田嶋隆」
 いっそ、正式な辞退通告書を印刷して各社各団体に送りつけてやるか。
 パラノイアだろうか、そこまでやると。


9月27日 月曜日 晴れ
ball20.gifU-22日本代表壮行試合 日韓戦。
 1-0で勝利。
 線審の判定がいかにもひどかった。
 後半終了間際、福田がオフサイドを取られたが、いったいどういう目を持っていたらあれがオフサイドに見えるのだろう。
 まあ、アウェイなんだから、きわどいプレイの判定が向こう寄りなるのは仕方がない。実際、そういう点ではお互い様でもあるわけだから。
 でも、それにしても、あれをオフサイドと言うのは、「井戸に毒を入れた」とかいった調子の言いがかりに近いんじゃないだろうか。
 ……って、不謹慎でしたね。
 すんません。
 状況から被害から、まるで、質が違いますね。
 ともかく、勝ったのだからすべて水に流そう。
 流した水には毒がはいってるかどうかは……
 
 その他、雑感。
 ところで、浦和の二部落ちについて、エスパルスサポーターの一部は
「大丈夫、伸二はウチが引き受けるから安心して二部に落ちてくれ」
 という感情を抱いているようだ。
 ふざけないでほしい。
 ジェフに言っておく。
「大丈夫。酒井クン(豊島高校出身!)と北島君はレッズで大事に育てるから、心置きなくJ2に行ってくれ」


9月28日 火曜日 晴れ
 元TBSアナウンサーの松宮一彦氏(45)が自殺。
TBSでは、「退社した人なので、コメントする立場にない」としている(「夕刊フジ」より)
 これ、ひどくないか?
 仮にも去年の6月までは同僚だった人間に対して「コメントする立場にない」はないだろう。
 どういう事情で辞めたのかは知らないけれど、松宮一彦といえば、TBSにとっては一応「功労者」の一人なんじゃないのか?
 うがった見方をするなら、そもそも、今回の事件の背景には、TBSの局アナ冷遇体質(だって、たとえばの話、世界陸上の司会に織田裕二と中井美穂を使う必然性がどこにあるんだ?)が関係していると言ったって良いんだぜ。
 そこへ持ってきて
「コメントする立場にない」
 って、これじゃまるでゴミ処理について苦情を持ちこまれた田舎の役人の対応じゃないか。
 一応メディアなんだろ?
 だったら、広報のコメントがどういう社会的影響を及ぼすかについて、もう少しマトモなイマジネーションがはたらいてしかるべきなんじゃないのか?
 仮に、このコメントを吐いた人間が、一個の個人として、松宮某の自死について一片の同情も感じていなかったのだとしても、だからって、あんたは個人的な感情をそのまんま口に出して良い立場なのか?
 あるいは、この冷淡なコメントは、痛くもない腹をさぐられたくない一心から出たものなのかもしれない。でも、それにしたって、通り一遍の追悼の言葉を述べておいていけないということもないだろ?
 たとえば、これが堅い一方の工作機械メーカーの広報が残したコメントなら、この種の無神経な責任回避の台詞が出てきてしまったとして、仕方がないところもある。
 不器用だなあ、と笑ってすませてあげても良い。
 でも、TBSって、放送局なんじゃないのか?
 あんたたちは、言葉と表現についてのプロフェッショナルの企業じゃないのか?

 まったく。
 これじゃ、世間にどう思われても仕方がないな。
「TBSって、冷たいのね」
 と、お茶の間のおばさんは当然そう思うだろうし、何より現場の士気にかかわるだろう。
「おい、この調子じゃ、オレらがどんな死に方したって会社は知らん顔だぜ」
「だろうな。『勤務時間中の死ではないのでコメントする立場にない』とか、『社員同士の殺人ではないのでコメントする立場にない』とか、いずれにしてもコメントする立場にはないんだろうな、一生涯」

 松宮さんとは、TBSでバイトをしていた時代に何度か言葉をかわしたことがある。
 個人的に親しかったわけではないが、それでも、あの人がわれわれのようなバイトの立場の人間にも感じ良く接する人であった印象は残っているわけで、私は今回の事件にはちょっとショックを受けている。
「コメントする立場にない」
 か。
 まったく。
 オレみたいな、二言三言口をきいたことしかない人間でさえ、それなりには哀悼の気持ちを抱いているというのに、20年も同じ職場で働いていた人間が言うに事欠いて「コメントする立場にない」かよ。
 どうしようもないな、あそこの上の方は。

 気持ちがおさまらないので、もう少し書く。
 ここから先に述べることは、憶測に過ぎない。
 が、事実から遠くない憶測だと自分では思っている。
 この前提で考えてみると、局アナは冷遇されざるを得ない。
 TBSにはそれなりに使える人材がいるし、優秀なアナウンサーだって何人もいる。
 でも、そんなことは関係ない。
 編成の人間にしてみれば、局アナを使ってもうまみがないからね。
 局アナを使うことで番組の制作費が浮くなんてことは、彼らの眼中にはない。
 プロデューサー連中の主たる関心事は、番組の質的向上や予算の有効利用よりも、むしろおのれの利権の帰趨にある。
 だってキャスティングというのは、タレントやアナウンサーの生殺与奪と番組制作予算の分配先を左右する、おそろしく巨大な権力なわけで、とすれば、キャスティングの権限を握っているプロデューサーは、この権力をアナウンス室みたいな狭い場所でなく、もっとデカい舞台で、デカく使いたいに決まっているんだから。
  1. たとえば、「ブロードなんたら」とかいう大型番組がある。
  2. 司会には某ライバル局を辞めてフリーに転じた某大物アナウンサーを起用しよう。
  3. 何千万円っていうギャラが発生するぞ。
  4. と、局のカネを使ってプロダクションに恩を売ることができる。
  5. そうすれば退職後の天下り先が確保できるかもしれない。
  6. キックバックだってあるかもしれない。
  7. 局アナなんか使っても、なーんにも返ってこないもんなあ。
 さよう。
 憶測だ。
 と、私は言っている。
 だから、苦情を持ちこまないでくれ。
 あんたたちの相手なんかしたくないから。


9月29日 水曜日 晴れ
 巣鴨。
 サンダルでサッカー。
 愚かだった。
 左足親指の爪が死んだ。

 ニュースステーションの久米宏氏が番組降板をほのめかす。
 うん。
 本人はやめたいだろうね。
 それも、降ろされるんでなく、自分からやめられるうちに。
 松宮さんの事件もあんまり他人事とは思えないだろうし。
 
零落を 待つ身や我も 脛に傷  

 合掌。


9月30日 木曜日 晴れ
 東海村の核燃料施設で事故、臨界か?
 おい、やばいぞ、と、私がまず最初に心配したのは、鹿島アントラーズだった。
 臨界の意味もよくわかっていなかった。
 梨花(リンカ)に聞こえた。
 私のアタマには、腐った駄洒落が住みついている。
 似た響きを持つ言葉は、ぜんぶ一緒に聞こえる。

売らんため リンカ生きてる 世紀末
ウラン貯め 臨界来てる 世紀末

 うん。わかっている。
 不謹慎だよな。
 だが、柳沢よ。
 今回のことは、キミにとっても、教訓をもたらしたはずだ。
 核燃料でさえ、ある臨界点を超えるまでは、まったく無害に見える。
 そういうものなんだ。
 リンカとは別れたほうが良い。


10月1日 金曜日 曇りのち晴れ
 昨晩、ふとネットの掲示板を覗いてからは、パソコンの前に座りきりで、結局徹夜になった。
 というのも、あんまりにもヤバい情報が流れていたからだ。
 たとえば、「原発事故災害サバイバルハンドブック」というWebページを見ると

「安全宣言」は、あくまでパニックを恐れてのことです。 たとえば当局による「屋内避難」は何を意味するのでしょう。これは屋内に避難していれば助かるということでしょうか。残念ながらそうではありません。
 (中略)(……これは)放射能が大量に漏れだしているときに発せられるもので、当局の原発事故対策としては最大級の対策で、はっきり言って緊急事態なのです。すぐに避難を開始しなければなりません。


 てなことが書いてある。
 ちなみに、このページは、今回の事故が起きるずっと前から存在していたものだ。
 おい。
 やばいじゃないか。
 と、思って、Yahooだのあめぞう@だの経由で各所の掲示板を覗き、原子力関連のリンクをたどってみると、いよいよもって状況はヤバい。
 たとえば、午前2時ごろの段階では、事態は本当に危機的に見えた。
 というわけで、午前五時ごろの時点で、私は五分五分よりは多めの見立てで鹿島アントラーズおよび水戸ホーリーホックならびに日立製作所の破滅を予感しておりました。

 結果的には、インターネット経由の情報は、玉石混交というのか、ガセネタだらけだった。
 一方、マスコミ発の情報はというと、これは皆無だった。ガセネタさえ流れてこなかった。
 NHKが一応24時間体制で終夜放送をしていたものの、午前零時以降、これといった新情報は文字通りゼロだった。
 民放は、報道を投げ出していた。おそらくなんらかの報道管制があったのだろう。
 で、仕方なく掲示板やWebを見て回っていたわけだが、こういうあやふやなものを情報源として活用するためには、こっち(つまり情報の受け手)の側が、よほどしっかりとしていなければならない。
「無責任な情報にまどわされるのは、受け手の側の責任だ」
 というのは、なるほど正論だが、あなたはガセネタを甘く見ている。
 ネットにガセネタを流すパラノイアの連中は、あなたが考えているほどバカではない。
 むしろ、パラノイアというのは総じてアタマの良い人たちなのだ。
 アタマが良くて、知識があっても、曲がっている人間はやっぱり曲がっているわけで、というよりも、頭脳明晰でプライドの高い自己肥大パーソナリティーの人間が世間的に不遇な場合、その人間は、かなりの確率でパラノイアになるものなのだ。
 彼らは、自分のアタマの良さや知識を持ちこたえるだけの人間性を欠いている。だから、彼らは世間一般をバカにし、呪い、憎み、それを害そうとさえする。
 しかも、不幸なことに、世間一般の善男善女は、彼らが考えている通りのお人よしのバカだったりする。
 
 いずれにしても、こと原子力関係については、生半可な知識を持っていてもどうしようもない。
 いや、深い知識を持っていてもやっぱりどうしようもないのかもしれない。
 掲示板の論争を見物しているとそのことがよくわかる。
 反原発の側にも、推進派の側にも、原子力や核物理学のエキスパートがいて、それぞれに専門的な知見を開陳しているのだが、その彼らの、同じ分野についての同じ知識は、結果として、まるで正反対の主張の根拠になっているのだ。
 私のような素人は、完全にお手上げだ。
 正しい知識が、ひとつの正しい結論を導くというのは、あるいは形式理論に過ぎないのかもしれない。
 知識は、むしろ偏見を補強する壁材になり、狂気を支える柱になるのかもしれない。
 でなくても、知識は、必ずしも正しい判断に結びつくわけではなく、多くの場合、単に敵をやりこめる道具として機能している。
 推進派からしてみれば、二言目には「つち」だの「みどり」だの「いのち」だのという情緒的な言葉を使う環境野郎の偽善と、その彼らの、自分だけが目覚めているかのように演説したがる啓蒙ヅラが腹に据えかねるのであろうし、反核派からしてみれば、推進派の無神経が我慢ならぬのであろう。
 で、結局、掲示板は、便所の落書きになる。

核分裂は人間に制御可能な技術なのだろうか

 という論点だけにしぼるなら、あるいは実りのある議論が可能なのかもしれない。
 が、原子力の掲示板に集う人々は議論を有利に導くために、ありとあらゆる周辺事態を持ちこむ。

原子力産業は政財界と癒着している。
石油に代わる新エネルギーが見つかっていない以上、原子力に頼らざるを得ないではないか。

 この程度ならまだ良い。
 じきに論敵に不可能な選択を迫るタイプの議論が登場する。

じゃああんたは日本の電力の4割を生産している技術が明日から無効になってもかまわないというのか?
するってえとナニか? お前は軍産複合体制が推進する拡大再生産の無限ループに乗っかって、歯止めのないエネルギー消費拡大に向かうつもりなのか?

 で、最後はお決まりの罵詈雑言。

電気を使ってパソコンをいじっている人間に反原発を語る資格はねえよ。
ふん、クリーンなエネルギーで被曝死できるんならあんたも本望だろうぜ。

 ふむ。
 他人の批評ばかりするのも卑怯な気がするので、私の意見を述べよう。

丸腰で 臨界止めて 滅び行く

 冷却水を抜くために防護服も着けずに臨界状態の現場に行かされて被曝したJCOの作業員が哀れだ。

丸腰で リンカ射止めて 滅び行く

 柳沢よ……

10月2日 土曜日 晴れ
 東海村臨界事故の原因は、「人為ミス」ということで決着するようだ。
 なるほど。
 死人に口なし。

 確かに、「バケツでウラン」(C)by日刊スポーツはひどい。
 でも、問題はバケツでウランを入れれば臨界が可能になってしまうようなシステムにあるんじゃないのか?

 だって、原発の労働者って、メディアはあえて言及しない(って言うか、言えない)けど、最低水準の人たちですよ。
 マトモな人間はあんな仕事やろうとしない(いくつか証言も得てますがね)んだから。
 カネが良くて、恒常的な人不足で、しかも審査が甘いってんだから、スネに傷持つ人々や自棄のやんぱちで人生を送っている連中が集まってくるのは誰が考えてもわかりそうなものじゃないか。
 だとしたら、そういう労働者でも安全に運用できるようなシステムにしとかないとヤバんじゃないの?

 自殺願望。
 テロリスト。
 飲んでる時はただの酔っ払いで、飲んでない時は廃人同様の大酒のみ。
 2たす2もわからない低脳。

 今後、事態がどう変わっても、原発をはじめとする原子力関連の施設で現場の手作業に従事する労働者の質があがるとは思えない。
 ある意味、報酬の額を上げるほど労働者のモラルはダウンするかもしれない。

 ロリコンの小学校教師
 サディストの歯科医
 自殺願望を抱いた原発労働者

 労務管理って、こういう人たちを使いこなすことだよ。  だって実際に多いんだから、そういう連中が。
 不可能?
 じゃあ原発も教育も医療も不可能だな。