2月9日 日曜日 晴れ
 中島らも氏の逮捕(マリファナ&マジックマッシュルーム所持)について、元アル中のモノ書きとして、コメントしておくべきかもしれない。
 別に放っておいてもかまわない……というよりも、依存症患者に対する適切な態度は、放置黙殺無視忘却以外に無いのだが、それはそれとして、何か一言あってしかるべきだと考えている人もあるでしょうから。

 どんなコメントをするにしても、とにかく「生みの苦しみ」だの「創作のヒント」だのといった決まり文句は、この際、言いっこなし(実際、ワイドショーのコメンテーター諸氏は、「芸術家にはやはりそういう誘惑が」式のステレオタイプのもの言いをしていたし、タブロイド紙のまとめ方も同様だった)だと思う。
 クスリはクスリ。酒は酒だ。
 アーティストが吸ってもマリファナはマリファナだし、スーパーモデルの鼻がスニッフしてもシャブはシャブだ。
 薬物依存やアルコールがらみの事件において、メディアが作家や文化人を特別扱いにする態度は、犯罪的ですらある。いい大人がジャンキーを甘やかしてはいけない。ずのぼせた高校生がボードレールに憧れるのとはわけが違うのだ。
 作家の不品行を英雄視する類の幼稚なデカダンス趣味が、マスコミ関係者の精神の内奥に残存している事情は、彼らの多くが挫折した芸術青年である以上、いかんともしがたいのかもしれない。が、芸術家の懶惰や小説家の頽廃を美への耽溺や魂の純粋さに短絡するものの見方は、単にうすっぺらだというだけではなくて、現実に多くの若い愚かな魂を破滅に追いやっている。
 破滅……という、この言葉の響きうっとりしている君。君に言っているのだよ、私は。
 いいだろう。
 破滅願望の持ち主である人間が、おのれの破滅を美化することは、ほかならぬ本人の破滅に免じて許してやることにする。
 でも、メディアが破滅を美化してはいけない。
 もってのほかだ。
 とんでもない勘違いである。

 「生みの苦しみ」についても一言だけ言っておく。
 何かを作る時に苦しみを感じているような人間は、創作には向いていない。
 というよりも、苦しんで作っているようなヤツは、要するに才能が無いのだからして、早々に創作から足を洗った方が良いのである。

 中島氏にとって、創作は喜びであり、かつ救いであったはずだ。
 彼の心に苦しみがあったのだとしたら、それは創作活動とは無縁の、おそらくは、酒や薬物にまつわるごたごたから生まれ出たものなのだと思う。
 結局、薬物は苦しみからの出口ではなくて、入り口だったということだ。

 では、なぜ中島らもは、あえて苦しみの入り口を求めたのかって?
 私にはわからない。
 たぶん、本人にだってわからないだろう。
 酒にしてもマリファナにしても、それが気晴らしであったごく初期の段階を過ぎれば、同じものになるのだ。快楽物質は、ある段階を経過すると苦悩そのものになる。そういうことだ。
 いや、そもそも快楽それ自体が、苦痛の先駆症状に過ぎないのかもしれない。
 って、言い過ぎか。
 言い過ぎだな。
 訂正する。
 快楽は苦痛の副作用である。
 ……というぐらいでどうだろう?
 変態?
 だな。
 撤回しよう。


2月10日 月曜日 晴れ
 連休?
 オレには関係ないぞ。


2月11日 火曜日 晴れ
 建国記念の日。
 この休日はどうして2月11日に固定されているのだろう。
 体育の日や敬老の日は、連休を偽造すべく流動的になっている。
 その原則が建国記念の日については適用されていない。
 たとえば「2月の第二月曜日」みたいなことにしてはいけない理由があるんだろうか。
 皇室に対する気遣い?
 マジかよ。

 同じ建国記念日でも、その日付が、独立、革命、戦勝みたいな、具体的な史実に残っている特定の一日にもとづいたものであるのなら、休日の都合みたいなことで安易にカレンダーをずらせない理由もわかる。
 が、わが国の建国記念日は、神話由来だ。
 とすれば、史実とは無縁なわけだし、もっとフレキシブルであって良いのではないか?

 しかし、あらためて考えてみるに、ほかならぬ建国記念日が神話由来だったりする国がほかにあるんだろうか?
「ぼくたちの国は、妖精だか神様だかが空から降りてきて泥からつくったんだよ」
 ってか?
 アニメじゃあるまいし。
 ロマンチックでよろしい?
 まあ、そうかもしれない。
 国歌がラブソングであったりすることも含めて、うちの国は一事が万事、そういうふうに夢幻的なわけで、その意味では森さんが言っていた「天皇を中心とする神の国」というのもあながち間違ってはいないのであろう。
 電波妄想国家。
 神話民族。
 幻想国体。
 メルヘン国民。
 絵空事政府。
 童話対策事業。
 以下自粛。



2月12日 水曜日 晴れ
 ※練炭自殺。
 問題は、インターネットで心中相手を公募したことではない。
 より深刻なのは、「睡眠薬と練炭とガムテープがあれば、楽できれいな自殺ができる」という情報(ないしは幻想)が、マスメディアを通じて、数十万人の自殺志願者(逃避的リセット妄想としての自殺信仰者も含めて)の魂に届いてしまったという事実だ。

 いたましいことだ。
 おそらく、後追いが山ほど出るだろう。
 自殺を考えるほどに追い詰められた人間は、どうしたって短絡的になる。逆に言えば、自殺というのは生と死を一足飛びにリンクさせてしまう一種の短絡なわけで、とすれば、そういうことをしようとしている短絡的な人たちにエサを与えてはいけないのである。

 小学校に上がるか上がらないかの頃、私は生まれてはじめて「万引き」という言葉を知った。
「お店のモノをお金を払わないで黙って持ってきちゃうことだ」
 という誰だか(幼稚園の先生だろうか?)の説明を聞かされて、私は
「そのテがあったか」
 と思った。
 以来、その万引きというのをやってみたくてしかたがなくなって……
 はい。
 結局、やりました。
 幼児の短絡。
 で、小学校に上がって知恵がついてから、そのことについて、ずいぶんと罪の意識に悩みました。
「ボクは悪い子だ」
「ぼくは嘘をついている」
「自分には隠し事がある」
 と、この屈折が私の心を少し曲げたわけで、そういう意味では、コラムニストとしての基礎は、この時期に……以下略。


2月13日 木曜日 晴れ
 何をしていたのか思い出せませぬ。


2月14日 金曜日 晴れ
 バレンタインデー。
 いまさら論評するようなことでもない。
 放置。


2月15日 土曜日 晴れ
 久々にイラストのページを更新。
 今後、ハードディスクの底に沈んでいるモノを順次公開する所存です。
 よろしくよろしく。

03/02/16/日 04:33