Scene 1

 午前3時だというのに、街はガキどもで溢れかえっている。
二十歳前の子供たちがターキーの十二年ものを飲み、ポンティアックを乗り回し、女を口説いている。
畜生、夜は若く、連中も若い。老兵は去るのみだ。俺は店を出た。
「アルタ」の裏手の露地で、俺は道に倒れている黒人につまづいた。
驚くには当たらない。この時間の新宿には、あり得ないことはひとつもない。
「だいじょうぶか」
 返事がない。
「フィールオールライト?」
 やはり返事がない。死んでいるのか、あるいは非英語圏の黒人なのか。
「ううう」
 黒人がうめいた。
「おい、何か言いたいことがあるのか」
 黒人は厚いひび割れた唇の間から、言った。

「ウン コクラエ」

 それが最後の言葉だった。

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